e日記風 独り言

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楽 天 の 商 品

-1746- Samsung のスマホ発火
もう1週間以上前のニュースだが、Samsung の新型スマホ Garaxy Note7 のリチウム電池が発熱・発火したということで、Samsung社は同製品の回収・販売中止・製造中止を決定したという。8月19日の発売直後 24日に台湾で最初の発火の情報があり、その後8月末までに30件以上の電池事故の報告があり、8月末に出荷を停止して9月2日から回収して対策を行っていたが、その後対策品からも発火事故が報告されてついに中止に追い込まれたようだ。
リチウムイオン二次電池の事故に関しては、ボーイング787型機での事故の際にも書いたが、他の電池と違ってリチウム系電池はエネルギー密度が格段に高いので事故が起きたときには他の種類の電池と異なり単なる発熱だけに留まらず発火する確率が高い。また、電池を小型化するためどうしても高密度構造になる傾向が強く、製造時の電極間距離などもミクロン単位の精度が必要で、それでも使用条件のわずかの違いで電極間がショートして発火する可能性が高い(ボーイング機の電池は高度 1万mの上空の低温で電解液が機能せず通電でリチウム金属が電極間に析出してショートしたらしい)。 
今回の問題のスマホの電池は Samsung SDI社と アンプアレックステクノロジー(ATL)社 という韓・中 メーカーの製造品らしいから、そうした製造上の品質問題も考えられるが、それ以外に気になるのは充放電条件だ。同じ電池でも、充電完了電圧を高くとり放電終了電圧を低くすれば見かけ上の電池容量は増す。ほぼ同じ大きさの iPhone6S Plus の電池の公称容量が 10.45Whなのに対して 13.48Whだというから、かなり無理した使い方だと思われる。上記のように充電完了電圧を高く充電終了電圧を低く設定すればスマホの使用可能時間は伸びるが電池の安全性は低下する。そこに信頼性の低い電池を使用した場合はこうした事故が発生する可能性は充分に考えられる。加えて充電時間もその短さを競い合っており、急速充電=大電流充電による電極の負担も大きくなって益々発火しやすい傾向にある。
更に、一旦公称してしまった電池寿命(使用可能時間)などを訂正しない限り同じ電池の充放電条件は緩和することは出来ないため、韓国メーカーとしては異例に早い製造中止という判断に至ったとも考えられる。(リコールで取られた対策では 充電制御は初期の 60%まで下げたらしいが、それでも事故は起きたということらしい。私の経験では充放電の電池制御をソフトウェアで行っている場合、通常は入り得ないルーチンにたまたまある条件が整った場合に入ってしまいそこから抜けられなくなって制御不能になるなど、通常の品質検討では発生しない不具合が起きることが多い。)
一部報道では 問題の機種は iPhone7 に対抗するため、かなり無理して市場投入を急いだとも言われており、信頼性試験の不足が命取りになったとも言えそうだ。回収・販売中止に伴う損害は 1千億円規模になると言う報道もあるが、向かう所敵なしの勢いだった業績に陰りも出てきており、今回の製品の命取りが会社の命取りにもなり兼ねず、トップシェアの Samsung社は少なくとも製品戦略の見直しなどかなりの逆風に晒されそうだ。

今日の写真は、この間出かけた出早神社の境内にあっためずらしい実。ウバユリの実に似ているが若干短い。ユリ科だと思うが、花を見ていないので判断が難しい。
Li電池
2016/10/14