ポアンカレ予想という数学の世紀の難問を証明したとして数学のノーベル賞とも言われる フィールズ賞受賞が決まったロシアの数学者ペレルマンという人が、フィールズ賞の受賞を辞退したという
ニュースがあった。
このニュースを聞いて、以前にアップした
TV/マスメディアの影響についてのページを再び思い出した。
ニュースで見る限りペレルマン氏という人はかなりの変わり者らしいが、今まで地道に(気ままに)数学の問題に取り組んでいたのが、ある日いきなり脚光を浴び、しかも自分の論文を足場に他の数学者がまたそれを利用したような論文を発表していく。
自分は静かに一人の世界に没頭したいのに、否応なく外の世界が自分の世界に土足で上がり込んでくる。多かれ少なかれマスメディアが媒介する世間とはそんなもんだ。
そんな世間が取り巻いている限り、いずれにしても彼が論文をインターネットで発表した時点で、彼の期待の一つは裏切られる覚悟をしなければならなかったはずである。おそらく彼もまだ気付いていないだろうが、彼が受賞を受け入れようと拒否しようと、どちらにしろ彼の人生からすればそれは一時の沸騰であり、同時にどちらの道を選んだとしても少なくとも一般世間からはすぐに忘れ去られるだろうということも考えるべきであったと思う。
彼がどうしても世間の耳目から逃れ続けたいと願うならば、彼は自分の論文の発表を死後に延ばすしかなかっただろうし、そうすることは彼以外の論文が先行する可能性が生まれるし、何より彼自身、論文の正しさ・価値を客観的に確認することは出来なかったはずである。
いずれにしろ、彼にとっての2つの欲望
★誰にも邪魔されず一人静かに物思いにふける快感 と
★そこから生まれた自分の論理が正しいという客観的な証明
は両立しないということだろう。